2022年3月4日、小泉一真は一般質問を行いました。そのうち、「いじめ重大事態」が異例の再調査となっている件についての質問について報告します。
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いじめ重大事態について
この件については、概要を当ブログでお伝えしている。
2022/03/02
改めていじめ事案の経過をざっとおさらいすると、次のとおり。
平成26年5月、当時小学校1年生が被害を訴えるいじめ事案が発覚
平成29年3月、保護者からの申し入れにより、長野市初のいじめ重大事態として、市教育委員会が調査委員会を設置
平成30年12月、第三者委員会による調査内容を被害児童側に報告
令和3年8月、被害児童側から市長部局による再調査の申し入れ
◆再調査の理由が答えられない?
答弁は、初めから小泉を心配にさせるものとなった。【小泉一真】 文部科学省「いじめ重大事態の調査に関するガイドライン」では、地方公共団体の長等による再調査を行う必要があると考えられる場合が幾つか具体的に示されておりますが、本件について再調査が必要と判断した理由は
【総務部長】 文部科学省のガイドラインでは、市長による再調査を行う必要があると考えられる場合、4つの例示がされているところでございまして、被害児童の保護者からは、市教育委員会の第三者委員会が行いました調査報告がこのガイドラインに該当するという、所見をいただいているところであります。 (略)
【小泉一真】 質問に答えていないですよね。その調査を必要と判断した理由を、ガイドラインに沿って答えてくださいと申し上げたのです。【総務部長】 具体的に4つ指摘をされる形になるわけですけれども、どの部分該当するかという部分についても、実際に事件の内容に関わってくることから、この場での回答のほうも差し控えさせていただきたいというふうに考えているところであります。(略)どれに該当する・しないというものは、私のほうで直接的な判断はまずしないという考え方をしたというところでございます。
【小泉一真】 (調査委員会を)取りあえず置いてみました程度の調査では、きちんとした調査はできないと申し上げておきます。
いじめ重大事態を扱う場合、いじめ防止対策推進法と、その下で文部科学省が定めた「いじめ重大事態の調査に関するガイドライン」を踏まえなければならない。ガイドラインでは、再調査が必要な場合を次のように定めている。
(再調査を行う必要があると考えられる場合)○ 例えば、以下に掲げる場合は、学校の設置者又は学校による重大事態の調査が不十分である可能性があるため、地方公共団体の長等は、再調査の実施について検討すること。①調査等により、調査時には知り得なかった新しい重要な事実が判明した場合又は新しい重要な事実が判明したものの十分な調査が尽くされていない場合②事前に被害児童生徒・保護者と確認した調査事項について、十分な調査が尽くされていない場合③学校の設置者及び学校の対応について十分な調査が尽くされていない場合④調査委員の人選の公平性・中立性について疑義がある場合
小泉の質問は、①から④のどれに該当するのかというもの。これに対する総務部長の答弁は2つに分かれる。
一つは、「事件の内容に関わってくる」から答えられないとするもの。しかし、ご覧のとおり、ガイドラインが①から④として示す理由は、何れも調査自体の問題を例示するものに過ぎない。このうちどれなのかを答えても、いじめ事案そのものに触れる必要はなく、何らの問題はない筈だ。例えば、①の新事実判明がその理由ですと答えても、事件の内容を示すことにはならない。その新事実とは何か説明せよと問うたなら、このような答弁はありうるかもしれないが。
もう一つは、ガイドラインが示した理由に該当するかしないか、「判断はまずしない」とする答弁だ。これは文部科学省のガイドラインから逸脱している。再調査という重い方針が、「判断しない」という点から始まっているというのは、軽すぎはしないか。
教育委員会設置の調査委員会の報告書に不満を持つ被害児童側に配慮した市長部局を評価したいところだが、何かスッキリしない。それが杞憂でない根拠を小泉は持っており、それは後ほど示したい。
確認済みの文書を認めない教育長
一般に、「○○というのは事実か」と確認する質問は議会においてはそれほど珍しいものではなく、質問された行政側は最大限答えなければならないのは当然のことだ。「その事実は不都合だから答えたくない」などという態度は認められない。しかし今回の教育長答弁は、その類のものだった。
【小泉一真】 教育長に質問します。 配布資料は平成27年2月18日付の文章でありまして、個人情報等抹消してありますが、宛名は被害児童保護者、発信者は当時被害児童が在籍した小学校の校長でした。(略)「本件について新しい事実が発覚した場合を除き、今後につきましては事実経過につき、これ以上の報告書の提出はいたしかねます」とあります。 被害児童保護者はこれを読んで、今後一切この事案について学校は対応しないと受け取ったと主張していますが、当該文書施行は適切だったかについて伺います。
【教育長】 配布をいただきました文書につきましては、これまで情報公開請求を受けて、教育委員会で開示したものではないと思われますので、その内容については、お答えすることはできません。
【小泉一真】H次長、これ学校が施行したってこの間認めましたよね。
【教育次長H】 事前に、お問合せをいただいた際に、その文書の公開請求された場合に、不存在になるのかどうかというようなお話もありましたんで、文書公開請求をいただいた際には、不存在にはならないと思うというお話をしたことは事実であります。 ただ、実際には公文書公開請求をしていただきまして、市としての正式な決定を経なければ、公式にはお答えできないものと考えております。
小学校長から被害児童保護者あてに施行された文書(部分)。事前の確 認で教育次長は存在を認めたが、一般質問では一転して認めない答弁。 |
【小泉一真】 先述のガイドラインでは、「学校の設置者及び学校は調査中であることを理由に、被害児童生徒保護者に対して説明を拒むようなことがあってはならず、調査の進捗等の経過報告を行う」とある趣旨から、学校長による当該文書施行は不適切であることは明白です。 きちんとした見解を示せるような、責任ある態度をとっていただきたい。
被害児童が在籍した校長が、事実経過についての説明を拒む文書を被害児童側に宛てて出しているのは、明らかに問題がある。
教育長・教育次長は白を切っているが、こちらも問題がある答弁だ。小泉はいじめ重大事態について質問すると予め通告してある。通告後、質問前に、こういう文書があるよねと教育次長に確認したところ、文書の存在を認めた。「不存在にはならない」とは、分かりにくいが、そういう意味だ。事前の手順を踏んでいるのに議会では答えられないと言うのは、いじめ事案に対処する際、学校長に不手際があった事実を隠蔽することにほかならない。
そもそも情報公開決定された資料でなければ答えないというのは、議会を愚弄する物言いで、国会だったら大問題になっているところだ。
中立公正で十分な調査が期待される第三者委員会の報告に疑義が申し立てられ、市長部局がそれに応じざるを得ない展開は、それ自体が異例といえる。調査が適正であったかについて議会は関心を寄せるのだが、個人情報保護の必要性から、検証できるだけの情報は提供されない。質問しても、「再調査中」であることを理由にロクな答弁が返ってこないが、しかし◆いじめ事案の具体的な内容と、◆いじめ調査そのものの問題は切り離して議論することは可能で、後者は個人情報に配慮しながらも最大限進めなければならない。再調査が終わらなければ、最初の調査手法の問題についての議論もできないというのでは、教育現場の改革のスピードが落ちることになる。
その結果、泣くのはこどもだ。
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